私は、コンサルティングで相談を受ける時には、値引きはなるべくしないように伝えます。
なぜなら、値引きのほとんどが無駄に終わるからです。
その値引きは本当に必要なことなのか。
もし、しなくていい値引きであれば、すぐに止めてしまうことです。
それだけで、あなたの会社やお店の利益は確実に増えることになります。
チェリーピッカーから逃れよう
流通業の世界には「チェリーピッカー」という言葉があります。
小売・マーケティング関連の用語で、普段は決して買い物をしないのに、特売の時期にのみ来店し、特売品のみ購入して帰るお客さんのことです。
別名「バーゲンハンター」などとも言います。
そもそも、目玉商品というのは、それだけを購入されても意味はありません。
お店側としては、その商品と一緒に他の商品を買ってもらったり、そのセールをきっかけに他の時期にも買い物に来てもらうためにやっているのです。
それなのに、安い時だけ来て、仕入れに苦労した目玉商品だけを買っていくのですから、これは、お店にとっても何のメリットもありません。
だったら、さっさと値引きで誘客することは止めるべきなのです。
値引きで集客することはご法度
値引きセールというのは、最も安易な集客方法で、たしかに、それでお客さんは集まるのですけれど、そのお客さんのほとんどが、値引きを目的に集まっているのですから、固定客にならないのです。
他で、もっと安売りするお店が現れたら、一斉にそちらに移動しまいます。
だから、値引きで集客することはご法度なのです。

割引クーポンなどは、その典型的な例です。
「そんなのわかっているよ。
うちはそういった値引きは一切していない」
こう言われる社長も忘れているもう一つの値引きがあります。
それが、ポイントカードです。
これは、FSP(Frequent Shoppers Program)と呼ばれるマーケティング手法に分類されます。
たくさん買い物をするお客さんを、ポイント還元でえこひいきするものです。
ポイントカードの落とし穴
ポイントカードとは、ポイントが貯まれば、たとえば1000ポイントで1000円値引きといった具合です。当然、よく利用するお客さんほど、ポイントが貯まることになります。
いいお客さんを囲い込もうという発想から生まれたもので、これで、一時的には上手くいくお店も多かったのです。
しかし、今は、そう簡単ではありません。
競合店がどこもやっていないなかで、その店だけがポイントカードを導入すれば、それだけで、売上も上がりました。しかし、今は、ポイントカードなんて、どこの店でもやっているのです。
そうなるとどうなるか?
お客さんは、全ての店のポイントカードを持つだけです。
あなたのお店しか、ポイントカードが無い時代であれば、どうせ買うならその店でということになります。
しかし、全てのお店がポイントカードを発行していると、お客さんは全てのお店のポイントカードを持つだけです。差別化になどなる訳はないのです。

しかも、ご丁寧に、今のお財布のウリは、こうしたポイントカードをいかに整理して収納できるかになっています。
もはや、ポイントカードに囲い込む力など備わっていないのです。
誰も特典に興味など持たない
そして、さらにひどいことに、今では、統合されたポイントカードがあります。
楽天ポイントとかTポイントですね。
よーく考えてみてください。
そのポイントは、あなたのお店で買い物した時についたポイントですか?
他のお店で買い物する為のポイントを、なぜ、値引きせにゃならんのですか?
さらには、他のお店の為に、なぜ、あなたのお店がポイント分の値引きを負担しなきゃならないのでしょうか?
もう根本的に考え方が違っているのです。
しかも、恐ろしい事に、多くのお客さんは、こういったポイントカードの特典には、ほとんど興味を持っていません。
例えば、あなたは今持っている全てのポイントカードの満点時の特典を覚えているでしょうか?
おそらく、そんな人、一人もいないはずです。
たとえ、覚えていたとしても、一部のカードだけなはずです。
このように、多くのお客さんは、カードにどんな特典があるのかを、意識せずに貯めています。
そして、結果的に特典をもらっているだけなのです。
これは、つまり、しなくてもいい無駄な値引きをしているということに他なりません。
お客さんのほとんどが、店から
「ポイントカードをお持ちですか?」
と聞かれるから出しているだけです。

私は、Tポイントを使えるからという理由で、レストランを選んだことは一度もありません。
このお店に、行きたいと思って、お店を選び、食べ終わってお会計の時に聞かれるから、ポイントで割引してもらうだけです。ちなみに、私のTポイントカードは10万ポイント以上溜まっています。これは、ちょこちょことしたアフィリエイト報酬を、Tポイントに入れているからです。このポイントを見ると、お店の人は、たいていギョっとします。
もちろん、使ったTポイントは、あとからお店に支払われますが、じゃあ、その基になるお金はというと、何処かのお店が負担しているということです。
この場合、お店で何かを購入した時にポイント分を負担していたり、加盟金やシステム資料料として、負担しているわけです。
その場での値引きではないにしても、どこかで、その分を値引きしていることになります。
その値引きは本当に必要なのか
しかし、お客さん側からすれば、特にありがたいとも思わずに、
「なんか、得しちゃった」
程度にしか思いません。
だから、こういったポイント還元性のカードは止めたほうがいいのです。
それを止めたからと言って、売上げが落ちることはまずありません。
なぜなら、お客さんはポイントが付くからその店を利用しているのではなく、そのお店の商品が好きであったり、雰囲気が好き、スタッフが好きだから、繰り返し利用しているのです。
決して、ポイントカードが好きで、そのお店を利用しているのではないのです。
それなのに、店側が勝手にポイントを付けているだけです。
これはつまり、お店がしなくてもいい無駄な値引きを勝手にしているだけです。
だから、こういったポイントカードを廃止するだけで売上は下がらずに、利益が上がっていきます。
一度、よーく考えてみてください。
そのポイントの為の値引きは本当に必要なことなのか。
そして、しなくていい値引きであれば、すぐに止めてしまうことです。
それだけで、あなたのお店や会社の利益は確実に増えることになるのですから。