小さな会社はあえて拡大を目指さない

小さな会社はあえて拡大を目指さない

これまでのビジネスの基本は、拡大し続けることだった。これはビジネスの目的が利益の追求であるという、資本主義の基本理念を考えれば当然の帰結である。しかし、拡大をしていくビジネスは、結局、市場の拡大している(人口が拡大し、需要が自然に増大している)海外へ進出し、激烈な競争を勝ち抜いていかなければならなくなる。そして、このような変化の激しい時代に、拡大をしていき、変化しにくい体制にしてしまうと、それが致命傷になって滅びることになる。(内田游雲)

profile:内田游雲(うちだ ゆううん)
ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。中小企業や個人事業等の小さな会社のコンサルティングを中心に行う。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的コンサルティングには定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めて経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「洩天機-運の研究」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)

ビジネスの目的は拡大ではない

これまでのビジネスの基本は、拡大し続けることだった。これはビジネスの目的が利益の追求であるという、資本主義の基本理念を考えれば当然の帰結である。なぜなら、利益を増やすにはビジネスを拡大する必要があるからだ。

特に、現代のような株主市場社会においては、短期的に利益を最大化できる経営者が、もっとも優秀な経営者とならざるを得ない。

しかし、この拡大するということは、一方で多くの問題をもたらす。拡大することで、固定費も拡大していき、損益分岐点額が高くなり、必要な最低限の売上高が大きくなるのだ。

市場が順調に拡大しているときには、この問題は表面化しないが、今の日本のように成熟した社会では、需要がなかなか拡大し無いために、結局過当競争になり、ディスカウント合戦が起きることになる。

日本のデフレ傾向の原因は、総需要の不足が原因だ。つまり、あえてお金を使おうとする人がいないことにある。もちろん、購買意欲を刺激できない売る側にも責任はあるのだが、それ以上に、国を含めてお金を使わないほうがいいというマインドのほうが大きな問題となっている。

普通の一般市民は、未来の給料が上がらないなら、節約しようとなる。だったら、国や自治体がまずお金を使う必要があるのだが、国民全体が国や自治体はお金を使うことを良しとしない。つまり、公共投資が悪であるというマインドに支配されているために、身動きが取れなくなってしまっているのだ。

そうなると、企業は売る為に値下げに走ることになる。価格競争の結果は、最終的には強い1社だけが勝ち残るといった激烈な生き残りの争いに発展していくのが普通だ。

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拡大することでリスクも拡大する

拡大してしまった会社の問題はそれだけではない。拡大してしまったがゆえに、変化ができにくいのだ。悪いことに、最近のインターネットの普及は、ビジネスの寿命を非常に短くしてしまっている。インターネットなどからの情報が安価で手に入るため、ライバルがすぐに参入してしまうのである。その結果、一つのビジネスの寿命がものすごく短くなってしまったのだ。

だから、どのような会社も次々と変態を続けていかなければ、生き残っていけない時代になっているのだ。このような変化の激しい時代に、拡大をしていき、変化しにくい体制にしてしまうと、それが致命傷になってしまう。

【参考記事】:

そこで、小さな会社においては、あえて拡大しないという選択をしたほうがリスクを回避することができるのだ。

もちろん、ビジネスによって必要な大きさはある。コンビニにはコンビニに適した店舗面積がありますし、スーパーにはスーパーに適した店舗面積があります。同様に、どのようなビジネスであれ、それに適した大きささがあるのだ。多くの問題は、この適正規模を超えて無理に拡大しようとしたときに始まる。ですから、必要以上に拡大することは、かえって経営に問題を生じさせることになる。

バブル崩壊後に、日本の企業は、内需の縮小に伴い、海外へと進出し、世界市場へと目を向けていきました。その為に、海外の企業を買収し、販路を求めて広げていった。その結果として、日本の経済を牽引していたはずの、シャープや東芝といった大企業は、悲惨な目に会っている。これが拡大を選んだ企業の行く末だ。

あえて拡大を選ぶのではなく、それぞれのビジネスにあった大きさに止め、適正規模以上に拡大をしないという選択もあることをまずは理解しておくことだ。

拡大することでリスクも拡大する

拡大することで90%以上が失敗する

では、すでに拡大をしてしまった企業はどうしたらいいのだろうか?

残念だが、このような場合は、市場(需要)の拡大している場所に行くしかない。今の日本で言えば、海外へのビジネス移転だ。それが、現在は中国やアジアに企業が進出せざるを得ないという現実である。中国は、既にそのリスクが表面化して、撤退していく企業が後を絶たないが、今後は、東南アジアやインドなどに、進出となっていくことになる。

つまり、拡大をしていくビジネスは、結局、市場の拡大している(つまり人口が拡大し、需要が自然に増大している)海外へ進出し、激烈な競争を勝ち抜いていかなければならなくなるのだ。これがグローバル資本主義の結論である。

さらに、組織運営の問題もある。

従業員が5人以下くらいの小さな会社やお店だった時には、経営者はマーケティングや集客といった、直接、売上に結びつく仕事だけをしていればよかったのが、大きくなってくると人材育成や組織運営をしなければならなくなる。小さな会社と、それ以上の中規模企業とでは、実は経営の仕方が全く違う。さらに、大企業となると、全く別のものになるのだ。

ここを理解しないままビジネスを拡大し、中規模企業に変わる時、この組織運営能力が無いと、あっという間に行き詰ってしまうことになる。特に5人から10人以上の会社になる辺りで多くの会社が失敗をすることになる。その理由が、この組織運営に失敗することにある。

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拡大の果てに起こる価格競争

さらに、拡大を目指すと最終的に価格競争になる。

拡大して数字を追うと、どうしても多くの人にたくさんの商品を売ることになる。その為には、たくさん商品を作らなければいけなくなる。営業マンもたくさん雇わなければいけないし、いろいろな事務処理をする人もたくさん雇わなければいけなくなる。こうして、新しく工場を建てて多くの人を雇うことになる。

すると今度は、固定費が増大する。人件費が増え、光熱費が増え、固定資産税なんかも増え、支払利息も増えたりする。そうすると、もっと多くの売上が必要になる。もっとたくさんの商品を売らなければいけなっていくのだ。

数多く商品を売る為には、まず価格を下げることになる。基本的に、価格を下げないとたくさんは売れないのからだ。これが落とし穴になる。

大半の商品は10%値下げすると、売上を2倍に伸ばしても利益は減少するのだ。利益が減少するから、さらにたくさん売る必要がでてくる。こうして、際限のない拡大が始まってしまう。

結局のところ、安易な拡大戦略は、自らの首を絞めることになる。しかし、本当に恐ろしいことはここからなのだ。

拡大の果てに起こる価格競争

拡大が商品価値を暴落させる

拡大戦略で、もっとも恐ろしいことは何か知っているだろうか?

それは、商品価値の暴落だ。商品価格とは、「認知された価値」で決まっていく。認知された価値とは、買っている人が、「その価値を払うだけの価値があると思っている」ということだ。

もしあなたの作り出した商品が、多くの人が欲しい商品だったとする。しかし、それは、日本に1つしかない。こうした場合には、価値は欲しいと思う人の中でもっとも高い金額となる。もし、どうしても欲しい人が二人いれば、価格は際限なく高騰していくことになる。

では、あなたはこの商品を同じ品質で大量生産することに成功したとしよう。これで、日本に500万個供給できるとする。こうなると、価値はほとんど無くなってしまう。おそらくその商品は100円ショップに並ぶことになる。このように、数字を追いかけて「拡大路線」に進んでいくと、商品の価値が暴落していくことになる。これこそが、拡大戦略を取った時の最終的な帰結なのだ。

だったら、最初から、敢えて大きくすることをせず、ビジネスを自分らしいサイズでとどめたほうが、失敗することなく、さらに、時代の変化にもついていける上、高利益率のビジネスを継続できるということになる。さらに、自分らしいサイズに止めることで、ビジネスに対して情熱を持ち続けることもできるのだから、拡大を目指さないという利点は大きい。

もちろん、どちらを選ぶかは、経営者の自由である。

拡大して、No.1の大会社を目指すのか?
拡大せずに、Only1のビジネスを目指すのか?

それは、あなたの考え方次第なのである。

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